黒洞ひかりのブログ

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リーマンテンソルの対称性

リーマンテンソルは $$ R^ n _ {\, ijk} = \partial _ j\Gamma^ n _ {\, ki} - \partial _ k \Gamma^ n _ {\, ji} + \Gamma^ n _ {\, jm}\Gamma^ m _ {\, ki} - \Gamma^ n _ {\, km}\Gamma^ m _ {\, ji} $$ である.これを4階共変版は次のようになる. $$ R _ {nijk} = g _ {nm} R^ m _ {\, ijk} $$

リーマンテンソルの対称性

リーマンテンソルは一見すると$4^ 4 = 256$ 次元のやばいやつに見えるが,実は独立な成分は $20$ 個だけらしい.

でもそんなめんどくさいリーマンテンソルにも添字の対称性がありました.

左端2つと右端2つを丸ごと入れ替える対称性 $$ R _ {nijk} = R _ {jkni} $$ 左端2つを入れ替える対称性,右端2つを入れ替える対称性 $$ R _ {injk} = -R _ {nijk}, \, R _ {nikj} = -R _ {nijk} $$ 右側3つの添字を巡回した和が0 $$ R _ {nijk} + R _ {njki} + R _ {nkij} = 0 $$ これは左端の添字が固定され,残りが$(1,2,3), (2,3,1), (3,1,2)$のように巡回していくものである.

今回はこの3つの対称性を用いてリーマンテンソルの独立な成分を見ていく.

添字が全て同じ場合

このときリーマンテンソルは0になる.2番目の対称性を用いることで $$ R _ {nnnn} = -R _ {nnnn} $$ となるので,0となることがすぐにわかる.

添字が3つとも同じ場合

この場合は,左端2つまたは右端2つの添字の必ずどちらかが同じになっている. 例えば次の添字の例 $0111, 1011, 1101, 1110$ が挙げられる.このとき,2番目の対称性を用いることでリーマンテンソルが0になることがわかる.

添字が2つとも同じ場合

右端2つまたは左端2つが同じ場合は先ほど記述したとおり,リーマンテンソルは0になる. $$ R _ {nnjk} = 0, \, R _ {injj} = 0 $$ その他の場合は $R _ {ninj}, R _ {innj}, R _ {nijn}, R _ {injn}$ であるが,これらは添字の対称性よりすべて $R _ {ninj}$ の形に帰着される.

$R _ {innj} = -R _ {ninj}, R _ {nijn} = -R _ {ninj}, R _ {injn} = R _ {ninj}$ というわけである.

下記に $R _ {ninj}$ 型のパターンを全て網羅した表を用意した.太字の箇所は独立な成分を表しており,それぞれにAからRの18個のアルファベットを割り当てている.細字の箇所は従属な成分を表しており,それに該当するアルファベットは独立成分を用いてどう表されるかを意味している.

たとえば,$R _ {0101} = A, R _ {0102} = B$ は独立な成分である.$R _ {2120}$ は独立な成分ではなく $R _ {2120} = L = R _ {2021}$ となる.

0101 A 1010 A 2020 D 3030 F
0102 B 1012 G 2021 L 3031 P
0103 C 1013 H 2023 M 3032 Q
0201 A 1210 G 2120 L 3130 P
0202 D 1212 I 2121 I 3131 K
0203 E 1213 J 2123 N 3132 R
0301 C 1310 H 2320 M 3230 Q
0302 E 1312 J 2321 N 3231 R
0303 F 1313 K 2323 O 3232 O

上の表から独立な成分だけを抜き出すと次のようになる.

基本的にリーマンテンソルの$R _ {ninj}$ 型の成分は下の18個を求めればよい.

0101 A 1012 G 2023 M
0102 B 1013 H 2123 N
0103 C 1212 I 2323 O
0202 D 1213 J 3031 P
0203 E 1313 K 3032 Q
0303 F 2021 L 3132 R

添字が全て異なる場合

この場合は添字は全部で24通りあるからめんどくさそうだが,実は対称性を用いることで独立成分はたったの2個しかないことが求められる.今回も添字の全パターンを網羅して調べてみよう.下の表の太字の部分で他の成分を表せる.

0123 S 1023 -S 2013 -T 3012 -U
0132 -S 1032 S 2031 T 3021 U
0213 T 1203 U 2103 -U 3102 -T
0231 -T 1230 -U 2130 U 3120 T
0312 U 1302 T 2301 S 3201 -S
0321 -U 1320 -T 2310 -S 3210 S

この表を見ると独立な成分はS,T,Uの3つに思えるが最後の対称性 $$ R _ {nijk} + R _ {njki} + R _ {nkij} = 0 $$ を用いれば, $S+T+U=0$ が成り立つので,結局 $U=-S-T$ となり独立な成分は2つとなる.

リーマンテンソルの独立な成分一覧

4次元時空におけるリーマンテンソルの独立な成分は下記の表の20個である.

0101 1013 2323
0102 1212 3031
0103 1213 3032
0202 1313 3132
0203 2021 0123
0303 2023 0213
1012 2123

あとの成分は添字の対称性の使い方を覚えて,$R _ {1111}, R _ {1101}, R _ {1123}$ のような形の成分はすべて0になることを覚えておけばよい,

付録1: 3次元時空のリーマンテンソルの独立な成分

3次元時空でのリーマンテンソルの独立な成分を考えるときは,4次元時空についての表で「3」という添字を抜けばよい.

3次元時空ではリーマンテンソルは81成分あるが,独立なものは以下の6つのみである.

0101 0202 1212
0102 1012 2021

付録2: 3次元時空のリーマンテンソルの独立な成分

2次元時空ではリーマンテンソルは16成分あるが,独立なものは $R _ {0101}$ のみである.